僧帽弁閉鎖不全症(粘液腫様変性性僧帽弁疾患ということもあります)は、中高齢の犬で非常に多い心臓病です。この病気にかかると特徴的な心雑音が聴こえるため、発見は難しくないですが、その後の治療には細心の注意が必要です。
重症度にあわせて治療法を検討するとともに、定期的に検査を行い、これ以上重症化しないように細やかな対応が求められます。
今回は犬の僧帽弁閉鎖不全症について、特に当院での検査や治療方針を中心に解説します。
僧帽弁閉鎖不全症とは?
僧帽弁閉鎖不全症とは、左心房と左心室を仕切る弁(僧帽弁)がうまく閉じなくなることで起こる心臓の病気です。
原因
詳しい原因はわかっていませんが、遺伝(小型犬に多い)や加齢(中高齢に多い)が関わっていると考えられています。
症状
初期段階では無症状ですが、呼吸が荒い、乾いた咳が出る、疲れやすいといった症状がだんだんと現れます。病気が進行すると心不全や肺水腫といった病気に発展し、死に至ります。
特に肺水腫は溺れているように苦しい状態となり、致死率も高いため、なるべく肺水腫にさせないような管理を目指します。
診断方法
基本的には聴診によって判断することができます。
僧帽弁閉鎖不全症の場合、僧帽弁がうまく閉じずに血液が逆流することで、「収縮期雑音」と呼ばれる特徴的な音が聴こえます。しかし、診断し治療方針を立てるうえでは心臓のエコーが重要になります。
当院ではエコーとともにレントゲンで状態を確認したうえで診断、治療方針の決定をしています。
その他に、毎回の心臓検査時には血圧もチェックしています。
治療方法
僧帽弁閉鎖不全症は重症度によってA~Dのステージに分類されていて、それぞれで治療方法も異なります。この病気の治療で重要なのは、心臓の状態を細やかにチェックしてステージを見極め、重症化させないようにコントロールすることです。
当院では2~3カ月に一度ご来院いただき、エコーとレントゲンで心臓の大きさに変化がないかを確認しています。その際には血圧や心拍数もあわせて測定し治療の判断をより詳細に行っています。血圧が高い、もしくは心拍数が増えている場合は、かなり心臓に負荷がかかってきている状態と考えられるため、より慎重な治療が必要になります。
当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせて治療を行うために、細やかな検査と判断を行うことを心がけております。このような対応により、当院では重症化して肺水腫を発症する例は少ないと言えます。もともと心臓に他の病気を抱えていたり、初診の時点でステージが進んでいたりする場合には肺水腫に至ってしまうことはありますが、その場合もしっかりと対応し軽症で済ませられる場合が多いです。
肺水腫を発症すると、一般的に3割程度の犬が亡くなってしまうといわれていますが、当院では肺水腫に対する処置ができるよう常に準備しています。
例えば、瀉血(しゃけつ:心臓にたまっている血を抜く方法)で利尿剤が効かない子や腎臓が悪い子のうっ血性心不全でのつらい咳をコントロールをするだけでなく、呼吸困難時には人工呼吸器による対応も可能です。
なお、僧帽弁閉鎖不全症は薬によって治療することが多いのですが、初期のステージでは薬を投与しても予後(ここから先の寿命)が変わらない場合もあります。そのため、さきほどご説明したような検査によって総合的に判断したうえで、投与の最適なタイミングを見極めることができます。
予防法やご家庭での注意点
初期のステージであれば特に運動を制限する必要はなく、今まで通りの生活で問題ありません。大切なのは、こまめに動物病院を受診して、聴診で心臓の状態を確認し、定期的な心臓検査で心臓の負担が進んできていないかをチェックすることです。
当院にはトリミングサロンが併設されているため、被毛のケアとあわせて定期的に聴診を行い、病気の進行を未然に防ぐよう努めています。
まとめ
僧帽弁閉鎖不全症は、中高齢の小型犬に多い心臓の病気です。こまめに心臓の状態をチェックして、ステージにあわせた治療を選択することで、QOL(生活の質)をより長く保つことができます。
当院では細やかなケアを心がけています。お困りの際はお気軽にご相談ください。
<参考文献>
東京都調布市の動物病院なら『タテイシ動物病院』
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