猫の扁平上皮癌について

猫の扁平上皮癌について

猫の皮膚や粘膜にできる腫瘍のなかでも、よく遭遇するのが扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)です。
特に、口の中や顎にできたものはQOL(生活の質)に大きく影響することが多く、治療後は食事がうまくできなくなります。

この腫瘍は周りの組織に広がるだけでなく、転移してしまう可能性もあります。そのため、治療を行わないと、犬や猫の長期的な健康を維持することが難しくなるため、早期発見・早期治療が大切です。

今回は猫の扁平上皮癌について、当院での診断方法や治療方法に焦点を当ててご紹介します。


扁平上皮癌とは

扁平上皮癌とは、扁平上皮細胞という皮膚や粘膜を形づくる細胞に由来する悪性腫瘍(がん)です。この病気は猫でよく見られ、特に口の中にできることが多く、口の中にできる腫瘍のうち70~80%を占めるともいわれています。また、局所浸潤性(がん細胞が周りの組織に広がっていく力)が高く、命に関わることもあるため、早めの診察が非常に大切です。


原因

扁平上皮癌を引き起こす明確な原因はまだ解明されていないものの、環境中のタバコの煙やノミよけの首輪などが発症リスクを高めるという報告もあります。


症状

扁平上皮癌は皮膚や耳、鼻、爪や足先など、さまざまな場所に現れますが、口や顎にできたものはかなり大きくなります

舌や喉にしこりができると、よだれが多く出る、うまく食べられなくなる、といった症状が現れます。扁平上皮癌が顎にできた場合は、顔の形が変化したり、骨折したり、潰瘍(皮膚や粘膜が広い範囲で傷ついた状態)が見られることがあります。また、顎の扁平上皮癌は強い痛みを招き、食欲低下やQOLの著しい悪化につながります。


診断方法

扁平上皮癌の診断では、細胞診や生検といった検査によって細胞や組織の状態を確認します。あわせて、転移の有無を調べるためにCT検査を実施するケースもあります。


治療方法

皮膚にできた扁平上皮癌の場合、主に外科的切除が検討されます。


顎にできたものは、顎そのものを取らなければいけないケースが多く、治療は困難になります。手術では、COLIBRI Ⅱ(電動の骨手術器)を用いて顎を切断します。広範囲に切除するため、切断後の縫合には時間がかかってしまうことがあります。また、術後は胃瘻(いろう)チューブからの食事が必要になる可能性が高いことにも注意が必要です。胃瘻チューブを設置する場合は、チューブの洗浄など細やかなケアが求められます。


さらに、手術後の抗がん剤治療を行う際には、抗がん剤感受性検査(どの抗がん剤がよく効くかを調べる検査)を実施することがあります。当院では、扁平上皮癌に限らずきちんと抗がん剤を精査して、その子に合った治療を行います。また、感受性が高い場合は、分子標的薬(パラディア)の使用を検討します。


予後

口の中にできた扁平上皮癌は、非常に予後が悪いことが知られています。
何もしなかった場合、生存期間の中央値は1~3ヶ月、1年での生存率が10%以下といわれています。一方で、手術で完全に腫瘍を取り切れれば生存率は上がり、1年での生存率は50%以上に上昇します。ただし、取り残しがあると再発する可能性が高い病気です。


当院では術後、約2週間ごとに来院いただき、レントゲンや触診で口の周りにあるリンパ節を確認し、転移がないか、健康状態に問題はないかなど、定期的なチェックを実施しています。


なお、これまでの説明で術後の食事にご不安をもつ飼い主様も多いかと思いますが、当院では胃瘻チューブを使わずに生活できている症例もございます。そこまで多いケースではありませんが、両顎切除の手術後4ヶ月経過した猫では、顎はなくても舌はあるため、柔らかい液状のおやつなどはうまく食べることができます。この症例は術後に抗がん剤を使用していますが、転移はなく健やかな生活を送っています。


予防法やご家庭での注意点

扁平上皮癌は治療の有無によって生存期間が変わってくるため、早期発見・早期治療が重要になります。また顎を切除する場合は、愛猫の顔が大きく変化すること、食事の介護が必要になることをご承知おきください。


まとめ

扁平上皮癌は、猫の皮膚や粘膜に現れるがんの一種です。口の中にできたものは犬と猫ともに悪性のものが多いため、食事中の仕草に少しでも変化が見られたら、早めにご来院ください。

<参考文献>

Cats, Cancer and Comparative Oncology – PMC (nih.gov)

Environmental and Lifestyle Risk Factors for Oral Squamous Cell Carcinoma in Domestic Cats – Bertone – 2003 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library


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