犬と猫の乳腺腫瘍について

犬と猫の乳腺腫瘍について

犬や猫はさまざまな種類の腫瘍を発生しますが、その中でも特に気をつけなければいけないのが乳腺腫瘍です。乳腺腫瘍が悪性の場合は、乳腺組織中に浸潤(横や下に広がっていくこと)するだけでなく、リンパを介して他の臓器に転移するケースも多いため、犬や猫が健康に過ごすためには早めの対処が重要です。

今回は犬と猫の乳腺腫瘍について、当院での診断や治療方法を中心に解説します。


乳腺腫瘍とは

乳腺腫瘍とは、胸からおなかにかけて広がる乳腺組織の腫瘍です。


原因

乳腺腫瘍の発症には女性ホルモンが関係するといわれています。そのため中高齢のメスでよく遭遇し、特に未避妊の場合はリスクが高まります。乳腺腫瘍はどのような犬種や猫種でも起こりうる病気です。


症状

乳腺腫瘍の初期にはこれといった症状がなく、乳腺が広がる部分に小さな固いしこりが見られます。乳腺腫瘍は時間が経つにつれて進行し、しこり自体が大きくなる、最初は1つだけだった腫瘍が複数見つかる、ほかの臓器に転移するなどが見られるようになります。さらに腫瘍が全身に広がると、元気や食欲がなくなったり、転移した臓器に関係する症状が現れたりします。


診断方法

乳腺腫瘍を疑った場合、まずは細胞診を実施します。注射用の細い針でしこりの細胞を採取し、それを顕微鏡で観察して、しこりが皮膚にできる他の腫瘍ではないかを確認します。細胞診だけでは、確定診断することや悪性良性の判断をすることはできないので、最終的にはしこりを切除し、病理検査を行う必要があります。

また、乳腺腫瘍を正確に診断するためには以下のように犬と猫の違いも考慮します。


<犬の場合>
犬では50%が良性、50%が悪性といわれています。悪性腫瘍の半分が肺転移を起こすため命に関わります

未避妊の犬の乳腺腫瘍(良性、悪性問わず)の発生率は2頭に1頭と言われています。このため初期発情(初めての生理)を迎える前に、避妊手術を行うことを強くおすすめします


<猫の場合>
猫では乳腺腫瘍の90%が悪性といわれています。また、猫は犬とくらべて乳腺組織が薄く広く分布しているため、一見乳腺がないと思われるところ(例:胸の中央部あたり)にも腫瘍ができることがあります。当院でも、おなかの真ん中の皮膚に6mmほどのしこりがみつかった例があります。


治療方法

乳腺腫瘍の治療方法は一般的に抗がん剤治療と手術が挙げられますが、抗がん剤が単独で乳腺腫瘍に効くという学術的な根拠は乏しいため、手術を優先して選択します


手術には超音波シーリングシステム(サンダービート)を使用し、超音波の熱と振動で組織を焼かずに優しくダメージがなく切っていきます。これらの機器では通常の電気メスと比較すると出血が最小限になり、切除までの時間が少なく組織へのダメージが少なくて済むというメリットがあります。また、当院では複数人の獣医師が手術に対応するため、左右両側から切除が可能ということも手術時間の短縮に繋がっています。


乳腺腫瘍の治療で重要なのは悪性か良性かという情報ですが、針生検では判断できないため、以下のような治療を計画します。


<犬の場合>
小さなしこりが1つだけある場合は、そのしこりがリンパ節から遠い位置にある場合に限り、その部分の乳腺を1つだけ切除します。しこりがかなり大きい場合や複数のしこりが存在する場合は、以下のように猫と同様の手術を行います。


<猫の場合>
左右片側の乳腺をすべて切除するとともに、周辺リンパ節を切除(リンパ郭清)します。前述したように猫では90%が悪性であるため、しこりがどんなサイズであろうと、発見した場合はこういった対応をとることを鉄則にします。


術後の対応

術後はしこりを病理検査で調べて、良性・悪性を判定します。
傷口が大きくなりやすいため、皮下に漿液(しょうえき:粘性物質を含まない、比較的さらさらした透明な液体)がたまらないように、ドレーン(医療用のストローのようなもの)をしばらく設置することがあります。また、炎症によって痛みが生じやすいため、当院では術中・術後ともに麻薬性鎮痛薬を使って、痛みを最小限に抑えることを意識しております。


予防法やご家庭での注意点

乳腺腫瘍は早期の避妊手術によって発症を予防できることがわかっています。犬の避妊手術は、1回目の発情前に行うと99.5%の確率で発生を防げます2回目の発情前では92%、3~4回目では74%の確率で防げますが、それ以降では効果がなくなります


さらに猫の避妊手術は、6か月齢以前に行うと91%の確率で発生を防げます。7~12か月齢だと86%の確率で防げることが報告されています。これらの情報を踏まえて、当院では犬と猫ともに生後7か月前後での避妊を推奨しています。


まとめ

乳腺腫瘍を防ぐには、避妊手術が有効です。ただし、避妊をすれば必ず発症しないというわけではないため、飼い主様は普段から愛犬や愛猫とスキンシップをとり、しこりがないかを確認することが重要です。乳腺腫瘍のしこりは表皮でなく皮膚の下にできるため、皮下に固いものがさわれる場合は早めに動物病院を受診しましょう。


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