犬や猫の胃捻転症候群は、緊急性が非常に高く、迅速な対応が求められる病気です。この病気は胃が捻じれることでガスや食べ物が詰まり、血流が遮断されるため、発症すると短時間でショック状態に陥り、治療が遅れると命を落とす可能性が高くなります。
特に胸の深い大型犬で発症しやすいことが知られていますが、猫にも発症例があり、注意が必要です。しかし、早期に発見し、適切な治療を受けることで救命率を高めることができます。
今回は犬や猫の胃捻転症候群について、症状や診断方法、治療方法、発症を防ぐための予防策などを詳しく解説します。
症状
胃捻転症候群を発症すると、以下のような症状が現れます。
＜犬の場合（特に大型犬、ダックスフンドに多い）＞
・急に吐き始めるが、何も吐けない
・食欲がなくなる
・お腹（特に胃のあたり）が異常に膨れる
・落ち着きがなくなり、そわそわと動き回る
・呼吸が荒くなる、元気がなくぐったりする
＜猫の場合（慢性鼻炎の猫、ペルシャ・エキゾチックショートヘアなどに発症することがある）＞
猫の場合も、症状は犬とほぼ同じですが、慢性鼻炎や短頭種（鼻の短い猫）の呼吸困難が引き金となることがあります。
こうした症状が見られた場合は、胃捻転症候群の可能性もあるため、早急に動物病院を受診しましょう。
診断方法
診断ではまず症状の確認を行い、レントゲン検査を実施します。胃捻転症候群の場合、レントゲンには「胃がガスで膨張して肝臓などを圧迫している像」や「胃の捻じれた部分に線が入っている像」が確認されます。
さらに、血液検査では、血流の悪化による炎症の兆候や臓器への影響を評価します。特に、胃の血流が遮断されると組織が壊死し、腹膜炎を引き起こす危険があるため、速やかに判断することが重要です。
治療方法
胃捻転症候群の治療は、病状の進行度合いによって異なります。
＜保存的治療＞
初期の段階で、まだ緊急性がそれほど高くない場合には、まず胃に針を刺してガスを抜き、胃を収縮させます。この処置によって一時的に症状が落ち着くこともありますが、処置後も胃拡張・胃捻転を繰り返すようであれば、外科的治療（手術）を行います。
＜外科的治療（胃固定術）＞
保存的治療で改善しない場合、もしくは緊急度が高い場合は、すぐに外科手術を行います。胃を元の位置に戻したうえで、「胃固定術」を行い、再発を防ぐ処置を施します。胃固定術では、胃を腹壁に縫い付けて固定し、再び捻じれることを防ぎます。
手術を行わなかった場合、胃が完全に壊死したり、血流が途絶えたことによるショック状態に陥ったりする可能性が高く、最終的に腹膜炎を引き起こして命を落とす危険性が非常に高くなります。そのため、早急な手術が不可欠です。
術後の食事管理
術後は、胃の動きが回復するまで食事管理が重要になります。また、術後は胃が固定されているため、お腹の動きが悪く、すぐにはいつもどおりの食事ができません。そのため、以下のような段階的な食事管理を行います。
＜術後すぐ＞
消化しやすい流動食（缶詰や液体食など）を少量ずつ頻回に与えましょう。
＜胃の動きが回復し始めたら＞
通常の食事に近いものを、少量ずつ回数を分けて与えましょう。
＜完全回復後＞
一度に大量のフードを与えず、適量を分けて与えましょう。
胃捻転症候群は再発の可能性があるため、手術後も慎重な食事管理が必要です。また、食後すぐに運動をさせると胃が再び膨張しやすくなるため、食後は安静に過ごさせるよう心がけましょう。
予防と日常の注意点
胃捻転症候群は、日頃のケアによって発症リスクを軽減することができます。
＜食後の運動を控える＞
特に大型犬では、食後すぐに激しい運動をすると胃が膨張しやすくなります。食後1時間以上は安静に過ごさせることを推奨します。
＜1回の食事量を調整する＞
一度に大量の食事を与えると胃が急激に膨らみ、捻じれるリスクが高まります。そのため、1日の食事量を複数回に分けて与えることで、リスクを軽減できます。
＜予防的手術を検討する＞
当院では去勢・避妊手術の際に予防的に「胃固定術」を実施することが可能です。胃捻転症候群を発症するリスクの高い犬種（超大型犬）を飼われている場合は、予防的な処置について動物病院に相談するとよいでしょう。
まとめ
胃捻転症候群は、命に関わる危険な病気であり、緊急対応が必要です。犬や猫が急に吐こうとして吐けなかったり、お腹が異常に膨れたりする場合は、一刻も早く動物病院を受診することが重要です。特に、症状の進行が速いため、判断を迷っている間に手遅れになるケースも少なくありません。
飼い主様が胃捻転症候群のリスクを理解し、適切な予防策をとることで、愛犬や愛猫の健康を守ることができます。万が一、疑わしい症状が見られた際には、迷わず動物病院に相談してください。
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