犬や猫は好奇心旺盛で、飼い主様が目を離した一瞬の隙に思いがけないものを口にしてしまうことがあります。食べ物以外の固形物を誤って飲み込むことを「異物誤飲」といい、特に若い犬や猫で多く見られます。
異物誤飲の多くは、緊急の対応を要するケースがほとんどです。飲み込んだものによっては、腸閉塞や腹膜炎などの深刻な合併症を引き起こし、命に関わる可能性もあります。そのため、飼い主様がいち早く異変に気づき、適切な対応をとることが大切です。
今回は犬や猫の異物誤飲について、症状や診断方法、治療方法、さらには予防のポイントなどを詳しく解説します。
異物誤飲の症状と診断
犬や猫が異物を誤飲した際、すぐに症状が現れる場合と、しばらく時間が経ってから異変が見られる場合があります。以下のような症状が見られたら、異物誤飲の可能性を疑いましょう。
<繰り返しの嘔吐>
フードや胃液に関係なく、吐き続ける場合が多いです。
<食欲の低下>
異物による違和感や痛みのため、食事を拒むことがあります。
<元気がなくなる>
腸閉塞や腹膜炎を伴うと、ぐったりとした様子を見せることがあります。
<背中を丸めるような姿勢>
腹部の痛みを示すサインです。
また、飼い主様が誤飲の現場を目撃し、すぐに動物病院を受診されるケースもあります。そのため、異変に気づいたら、迷わず動物病院に相談してください。
診断方法
動物病院では異物誤飲が疑われる場合、すぐに超音波検査(エコー)を行います。ただし、すべての異物がエコーやレントゲンで確認できるわけではありません。
金属や硬い異物は比較的映りやすいですが、布や綿、ゴムのような柔らかい素材は画像に映らないことも多いです。しかし、エコーでは腸の状態を確認することができます。例えば、以下のような状態が見られる場合、腸閉塞の可能性が高まります。腸閉塞が確認された場合は緊急性が高く、すぐに対応が必要です。
・異物よりも前方(口側)の腸が腫れている(うっ滞している)
・異物よりも後方(肛門側)の腸が縮んでいる(萎縮している)
また、異物が大きすぎると、胃や腸の血流が阻害されてしまい、2~3日で組織が壊死し、腸に穴が開いてしまう(穿孔)こともあります。このような状態になると腹膜炎を引き起こし、命に関わるため、早急な処置が必要となります。
異物誤飲は放置すると重篤な状態につながることもあるため、少しでも気になる症状があれば、早めに動物病院を受診しましょう。
異物誤飲の緊急性と合併症
前述したように、異物誤飲によって腸閉塞になると、腸の血液の巡りが悪くなり、腸の粘膜に血液が行き届かなくなります。それにより、腸の粘膜が壊死することで壁に穴が開き、腹膜炎などの重篤な合併症の発生につながってしまいます。
こうした変化はとても危険で、数日のうちに進行してしまうため、異物を飲み込んだときには緊急の対応が求められます。
<緊急性の判断基準>
以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
・何度も吐く
・元気がなくなる、ぐったりする
・歯茎や舌の色が青白くなる(ショック状態)
・強い腹痛を示す(背中を丸める、触られるのを嫌がる)
これらの症状は、腸閉塞や腹膜炎の可能性が高く、緊急手術が必要になる場合があります。
治療方法
治療方法は、異物が詰まっている場所や異物の大きさによって異なります。
<胃や十二指腸(胃のすぐ後ろの腸)にある場合>
内視鏡による摘出が可能です。当院では非常に細い内視鏡を使用しており、体重1kg程度の猫でも口から十二指腸内へと挿入できます。比較的小さな異物であれば、開腹手術をせずに取り出すことができます。
<十二指腸以降の小腸にある場合>
内視鏡で異物を確認することはできますが、摘出するには開腹手術が必要になります。
<小腸の大部分を異物が占めている場合>
この場合、内視鏡では正確な異物の位置や状態を把握することが難しく、開腹手術による確認・摘出が必要となります。特に、異物誤飲が疑われるものの確証が持てない場合、開腹手術を行うことで診断を確定し、適切な処置を施すことができます。
<回腸(小腸の末端)や大腸(結腸)にある場合>
この部位に異物がある場合、肛門側から内視鏡を挿入し、取り除くことが可能です。
いずれのケースでも、異物による閉塞が起こっている場合、異物を除去できれば回復する可能性が高まります。しかし、閉塞した状態が長時間続くと、腸の血流が妨げられ、たとえ異物を取り除いたとしても命を落とすリスクが高まります。
「愛犬や愛猫に負担をかけたくない」と思われる飼い主様も多いかと思いますが、大切な命を守るためには、できるだけ早い決断が重要です。少しでも異変を感じたら、速やかに動物病院を受診してください。
予防と注意点
異物誤飲を防ぐためには、犬や猫が届く場所に危険なものを置かないことが理想的です。しかし、思いがけないものを飲み込んでしまうこともあり、完全に防ぐのは難しいのが現実です。そのため、食べられると困るものはフタ付きの容器に入れたり、高い場所にしまったりするなど、管理方法を工夫することが大切です。
万が一、犬や猫が固形物を口にしてしまった場合は、慌てず冷静に口から離すように促しましょう。驚かせると反射的に飲み込んでしまうことがあるため、静かに対応することが重要です。また、おもちゃや骨なども誤飲のリスクがあるため、プラスチック製のものや、体格に対して大きすぎるものは避けるようにしましょう。骨を与える場合は、食べ終わるまでしっかり見守ることをお勧めします。
また、異物誤飲は症状が現れないまま進行し、健康診断で偶然発見されることもあります。そのため、定期的な検査を受けることで、早期発見につながる可能性が高くなります。
まとめ
犬や猫の異物誤飲は、放置すると腸閉塞や腹膜炎といった重篤な状態を引き起こし、命を落とす危険性があります。飼い主様がいち早く異変に気づき、迅速に動物病院を受診することが何よりも重要です。
「もしかして異物を飲み込んだかも?」と少しでも不安を感じたら、自己判断せずにすぐに獣医師に相談しましょう。早期発見と適切な治療が、愛犬や愛猫の命を守る鍵となります。
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