犬の糖尿病

犬の糖尿病

最近、愛犬が「水をよく飲むようになった」「急に体重が減った」といった変化に気づいたことはありませんか?それはもしかすると、糖尿病のサインかもしれません。


犬の糖尿病は、中高齢の犬に多く見られる内分泌疾患のひとつで、放置すると命に関わることもある重大な病気です。しかし、適切な治療と日常での管理によって、健康的な生活を送ることも十分に可能です。


今回は犬の糖尿病について、当院で行っている診断や治療方法、さらにはご家庭での注意点など、飼い主様が知っておきたいポイントについてご紹介します。


犬の糖尿病とは?

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖値を下げる重要な働きを担っています。このインスリンの分泌が不足したり、うまく作用しなかったりすると、血液中や尿中の糖の量が異常に増え、体にさまざまな影響を及ぼします


犬の糖尿病は、こうしたインスリンの異常によって血糖値が慢性的に高くなる病気です。


原因

犬の糖尿病は、人間のⅠ型糖尿病と似た仕組みで発症することが多いといわれています。主な原因は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が機能しなくなり、血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンが十分に作られなくなることです。


その背景には、遺伝的要因や加齢による変化が関係していると考えられており、特に中高齢の犬での発症が目立ちます。ただし、これまで元気に過ごしていた犬でも、ある日突然症状が現れることがあるため、注意が必要です。


症状・診断方法

当院ではまず、飼い主様から普段の生活で見られた症状について丁寧にヒアリングを行います。特に以下のような症状が確認された場合、糖尿病の可能性があります。


・多飲多尿
・急に痩せてきた
・元気や食欲がない


糖尿病が疑われる場合、以下の検査を実施します。


<血液検査>
血液中のブドウ糖(グルコース)濃度を測定し、正常より高い値が出た場合は高血糖が疑われます。


<尿検査>
尿中に糖が含まれていないかを確認します。血糖値が高くなると尿に糖が漏れ出すため、糖尿病の判断材料となります。


<フルクトサミン測定>
過去1〜2週間の平均的な血糖値を測定します。一時的なストレスによる高血糖か、慢性的な糖尿病かを見分けるための重要な検査です。


なお、これらの検査は通常、外部の検査機関に依頼することが一般的ですが、当院ではすべて院内で迅速に実施可能です。そのため、診断から治療までをスムーズに進めることができます。


治療方法

犬の糖尿病治療では、血糖値を適切にコントロールするために、インスリン注射が基本となります。


治療は、まず点滴による「水和補正」で体内の水分バランスを整えるところから始めます。その後、1時間ごとに血糖値を測定し、「血糖曲線(1日の血糖値の変動グラフ)」を作成して、犬それぞれに合ったインスリンの種類と量を決定します。インスリンには数種類あり、作用時間や効果の出方が異なるため、体質や生活リズムを考慮して選びます。


こうした準備が整ったら、ご自宅での治療に移行していきます。


「自宅で注射なんてできるかな…」と不安に思われる方も多いですが、当院では注射の打ち方や注意点をわかりやすくお伝えし、初めての方でも安心して取り組めるよう丁寧にサポートしています。


治療中は、血糖値が適切にコントロールされているかどうかを慎重に確認していく必要があります。体重の減少が止まったり、食欲や元気が戻ってきたりするのは、治療が順調に進んでいるサインです。一方で、変化が見られない場合には、インスリン量の見直しが必要です。


特に、血糖値が極端に高くなると、肝臓から毒性物質であるケトン体が発生し、「糖尿病性ケトアシドーシス」という命に関わる状態に陥ることもあります。


そのため当院では、必要に応じて、犬に装着して血糖値を常時確認できる「センサー機器(リブレ)」や、ご家庭で使える「簡易血糖測定器」の貸し出しも行っています。ご希望やご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。


治療後、予後

犬の糖尿病は、一度発症すると生涯にわたって管理が必要になる慢性疾患です。治療を続けていくうえで、以下の点を意識することが大切です。


・定期的な通院による状態チェック
・血糖値の再評価とインスリン量の見直し
・毎日決まった時間での食事とインスリン注射
・治療にかかる費用やご家庭での継続管理


しっかりと治療を続けることで健康を維持できている犬も多くいます。当院でも、10年以上にわたって治療を継続し、元気に過ごしている子たちが複数います。大切なのは、飼い主様と動物病院が連携して、一緒に病気と向き合っていくことです。


当院では、インスリン注射の方法や血糖値の測定、食事管理などについても丁寧にご説明しています。初めての方でも安心して治療に取り組めるよう、しっかりサポートいたします。不安なことや分からないことがあれば、どうぞいつでもご相談ください。


予防法やご家庭での注意点

現時点では、犬の糖尿病を完全に予防する方法は確立されていません。ただし、異変に早く気づくことで、重症化する前に対応することは可能です。


普段から「水を飲む量が増えていないか」「急激に痩せていないか」「食欲にムラが出ていないか」といった点を観察し、少しでも気になることがあれば、早めに動物病院を受診しましょう。


また、糖尿病はご家庭での管理が非常に重要な病気であり、飼い主様のご協力が治療の成果に大きく影響します。そのため、毎日決まった時間にご飯を与え、インスリン注射もきちんと続けていくことが大切です。


まとめ

犬の糖尿病は、放置すれば命に関わる可能性のある重大な病気です。しかし、早期に気づいて適切な治療と日々のケアを続けていけば、健康的な生活を送ることは十分に可能です。


当院では診断から治療、そして日常でのケアに至るまで、一つひとつ丁寧にサポートしております。血糖曲線の作成やインスリンの調整、治療機器の貸し出しなど、個々の犬に合わせた細やかな医療を提供しています。


また、糖尿病と診断されても、落ち着いて一緒に向き合っていくことで、犬のQOLを守ることができます。不安な点や疑問がありましたら、お気軽にご相談ください。


<参考文献>

Diabetes mellitus in dogs attending UK primary-care practices: frequency, risk factors and survival | Companion Animal Health and Genetics | Full Text


診療案内についてはこちらから


東京都調布市の動物病院なら『タテイシ動物病院』

当院についてはこちらから


【当院のアクセス方法】
府中市・三鷹市・狛江市アクセス良好です。
■電車でお越しの場合
・京王線 調布駅 東口 徒歩5分
・京王線 布田駅 徒歩5分


■バスでお越しの場合
布田一丁目バス停から徒歩1分


■車でお越しの場合
調布ICから車で6分
病院隣に当院専用駐車場2台あります。
※満車時はお会計より近隣パーキング料金(上限あり)をお値引きいたします。

アクセスについてはこちらから

copyright 2019 tateishi animal hospital all rights reserved.