犬の股関節に起こりやすい病気を解説!(股関節形成不全、レッグペルテス、股関節脱臼について)

犬の股関節に起こりやすい病気を解説!(股関節形成不全、レッグペルテス、股関節脱臼について)

犬が後ろ足を上げたまま接地できない、歩様がおかしい、跛行するなど様子を示した場合、股関節(大腿骨と骨盤をつなぐ関節)の病気を発症していることがあります。
股関節の病気の治療には、内科療法と手術の選択や、術後のリハビリが非常に重要なため、しっかりと診断を行い、その子にあった治療を進める必要があります。

今回は当院でよく遭遇する、股関節形成不全、レッグペルテス、股関節脱臼、についてご紹介します。


犬の股関節形成不全、レッグペルテス、股関節脱臼とは?

<股関節形成不全>

何らかの理由で股関節が不安定になることで引き起こされる病気です。


<レッグペルテス>

後ろ足の骨の一部である大腿骨頭に血液がうまくめぐらず壊死を引き起こす病気です。


<股関節脱臼>

大腿骨頭が正常な位置からずれてしまう病気です。


原因

股関節形成不全の原因には、遺伝や環境、栄養不足といったさまざまな要因が関わっているといわれています。海外の文献などでは大型犬に多いといわれていますが、当院では小型犬でよく遭遇します。
また、レッグペルテスでは若齢の犬で多く発症します。
股関節脱臼は高いところから飛び降りるなど、急な事故で起こることが多いです。


症状・診断方法

股関節形成不全でもレッグペルテスでも股関節脱臼でも膝蓋骨脱臼でも、後ろ足の歩様異常(挙上、跛行する)は様々であり、歩き方の観察や触診、レントゲンで総合的に判断します。


犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)についてはこちらから


治療方法

当院では、非ステロイド性炎症剤や抗体製剤(リブレラ)の注射といった内科治療を行うことで痛みを和らげ、これらの治療に反応がない場合は手術(骨頭切除)を実施しています
すぐに手術を行う動物病院もありますが、当院では内科治療でしばらく様子をみてから判断しています。


<股関節形成不全>

股関節形成不全の治療は、内科治療と手術の2つに分類されます。


<レッグペルテス>

症状が軽度で症状に変化がほとんどみられない場合には保存療法を行うこともありますが、ほとんどの場合、手術が必要になります。


<股関節脱臼>

受診した時点ですでに歩けないことが多いため、手術と内科治療を同時に行います。脱臼した方向によって治療法が異なるため、頭背側脱臼のケースは骨頭切除を行い、尾腹側脱臼(小型犬に多い)の場合はギプスなどによる外固定を選択します

股関節脱臼尾腹側脱臼に対する足かせ(ホブル)包帯による外固定


しかし、頭背側脱臼のケースでクッシング症候群や糖尿病、高齢の影響で筋肉が萎縮している場合では、後ろ足を支えるのに十分な筋肉がないため、骨頭切除では歩けなくなる場合もあります。このため当院では、骨頭切除を行わずにトグルピン法を選択します。
トグルピン法は、骨頭を切断せず人工靭帯を用いて靭帯を再建するため、回復が早く手術から2日後には歩行できることもあります。

また、手術方法に限らず、当院で股関節の手術を行った犬は術後、全頭が問題なく歩けるようになっています。これらの手術とあわせて、痛み止めのために非ステロイド性炎症剤や抗体製剤(リブレラ)の注射といった内科治療も同時に行います。
骨頭を切除する手術では、「COLIBRI Ⅱ」を使用します。
COLIBRI Ⅱはバッテリー駆動で手術中にコードが邪魔にならず、さまざまな角度で使用できます。

COLIBRI Ⅱのメリットとしては、沢山のアタッチメントにより骨へのドリリング、ピンニング、ピン・ワイヤーの挿入、骨切りなど安全に楽に実施できます。とても効率がよくなり手術時間も早くなりました。
また、従来の骨の切り方では、周りの組織を傷つけてしまうことがありますが、COLIBRI Ⅱを使用することによってきれいに骨を切ることが可能です


手術後について

手術を行った場合は、術後にできるだけ早くリハビリを行うことを強くお勧めしています。なぜなら、骨頭切除によって股関節の一部がなくなることで、後ろ足を筋肉で支えるようになりますが、リハビリを行わないと筋肉が固くなり、手術をしても歩けなくなることがあるためです。

当院ではリハビリ専門の動物看護師が在籍しているため、細やかにケアを行うことができます。
また、術後には体重管理にも気を付ける必要があります。

リハビリをしている様子①


リハビリをしている様子②


予防法やご家庭での注意点

レッグペルテスは生後半年以降の若い犬に多くみられます。若齢犬で少しでも歩く様子に異常がみられたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

また、後ろ足に痛みがみられる場合は、激しい運動や長距離のお散歩を避けるなど関節炎が悪化しないように安静に過ごすことが大切です。

当院ではレッグペルテスを早期に発見する対策として、生後6~7か月程の犬が避妊去勢手術を受ける際、同時にレントゲン検査を受けることをお勧めしています。


まとめ

犬の股関節形成不全やレッグペルテス、股関節脱臼は、いずれも今後歩けなくなってしまう可能性があります。
当院では術後のリハビリにも力を入れているため、歩き方に違和感がみられたらお気軽にご相談ください。


<参考文献>

Diagnosis, prevention, and management of canine hip dysplasia: a review – PMC (nih.gov)
Toggle rod stabilization for treatment of hip joint luxation in dogs: 62 cases (2000–2005) in: Journal of the American Veterinary Medical Association Volume 229 Issue 6 () (avma.org)
Legg Calvé Perthes disease in the dog – ScienceDirect


■関連する記事はこちらから

犬の膝蓋骨脱臼について

犬の橈尺骨骨折について


診療案内についてはこちらから


東京都調布市の動物病院なら『タテイシ動物病院』

当院についてはこちらから


【当院のアクセス方法】
府中市・三鷹市・狛江市アクセス良好です。
■電車でお越しの場合
・京王線 調布駅 東口 徒歩5分
・京王線 布田駅 徒歩5分


■バスでお越しの場合
布田一丁目バス停から徒歩1分


■車でお越しの場合
調布ICから車で6分
病院隣に当院専用駐車場2台あります。
※満車時はお会計より近隣パーキング料金(上限あり)をお値引きいたします。

アクセスについてはこちらから

copyright 2019 tateishi animal hospital all rights reserved.