実際に診療現場では、「軽い膀胱炎だと思って様子を見ていたら、実は命に関わる重篤な状態だった」というケースにたびたび遭遇します。そのため、犬や猫のトイレの回数だけで安心せず、「実際に尿が出ているかどうか」を確認することが、命を守る第一歩です。
今回は、飼い主様が見落としがちな排尿異常の2つのタイプやそれぞれの特徴、当院の診断方法、日常生活で実践できる観察ポイントなどについて、解説します。
まずは知ってほしい|飼い主様が混同しやすい「2つのタイプ」
排尿に関する異常は、大きく分けて次の2つのタイプがあります。・タイプA:頻尿(回数が多い)に見えるタイプ
・タイプB:尿が出ていない、もしくは極端に出にくいタイプ
どちらのタイプでも、「トイレに何度も行く」といった行動が見られるため、飼い主様からは区別がつきにくく、症状を見誤ってしまうことがあるのです。実際、頻尿のように見えても、まったく尿が出ていない場合もあり、これは緊急の処置が必要な状態です。また、同じ「何度もトイレに行く」でも、体の中で起きていることはまったく異なります。
ここからは、それぞれのタイプの特徴と、注意すべきポイントを詳しくご説明します。
タイプA:頻尿(回数が多い)に見えるケース
排尿の回数が多く見えるタイプです。一見軽症に思われがちですが、実は以下のような重大な病気が隠れていることもあります。<膀胱炎>
膀胱の中が炎症を起こし、残尿感があるため、少量ずつ何度も排尿するようになります。犬や猫が頻繁にトイレに行く姿が見られます。
<初期の尿道閉塞>
尿道が完全に詰まってはいないものの、狭くなっている状態です。排尿しにくいために、何度も排尿姿勢をとりますが、出る量はごくわずかです。
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このタイプの特徴は、「少量ながらも尿が出ている」点です。そのため、飼い主様は「尿が出ているから大丈夫」と思いがちですが、決して油断はできません。放置していると、次にご紹介する、より危険なタイプBへと進行する可能性があります。
タイプB:尿が出ない・出にくいケース(特に危険)
もっとも注意が必要なのが、尿がまったく出ていない、あるいは極端に少ないタイプです。これは命に関わる緊急疾患のサインであり、「様子見」が最も危険な判断になります。また、以下のような病気を起こしている可能性があるため、注意が必要です。<尿道閉塞(結石・栓子)>
尿道に結石や粘液の栓が詰まり、完全に尿が出なくなる状態です。膀胱内では、腎臓から作られた尿がどんどん膀胱に運ばれてくるため、外陰部へとつながる尿道に石などが詰まっている場合パンパンに膨れ上がり、最悪の場合は膀胱破裂を起こす可能性があります。また、尿が出せないことで腎臓へ大きな負担がかかり、急性腎障害に陥ることもあります。
<腎不全(乏尿・無尿)>
尿が出ないのではなく、そもそも腎臓が尿を作れていない状態です。特に末期の腎不全では、尿の量が極端に少なくなる「乏尿」や、まったく出なくなる「無尿」が起こり、全身の状態を急速に悪化させ、非常に予後が悪いです。
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<椎間板ヘルニア(神経障害)>
背骨の中を通る神経が圧迫されることで、腰に強い痛みが出たり、後肢が麻痺したりします。この状態では、おしっこを出すような神経も麻痺し、膀胱を自力で絞ることができなくなります。
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これらのタイプBの異常は、一刻を争う対応が必要です。「いつもより元気がない」「排尿の姿勢をとるのに、何も出ていない」と感じた場合には、すぐに動物病院に連絡してください。
飼い主様にできる観察ポイント
犬や猫の排尿トラブルを早期に見つけるためには、「トイレに行く回数」だけでなく、「実際に尿が出ているかどうか」を観察することが非常に大切です。ここでは、ご家庭で確認できる具体的なチェックポイントをご紹介します。
<犬の場合>
・排尿の姿勢をしっかり取れているか
・排尿した姿勢のまま固まったり、痛がったりしていないか(椎間板ヘルニアの可能性があります)
・排尿後、ペットシーツがしっかり濡れているか
<猫の場合>
・トイレの猫砂がきちんと固まっているか、猫砂がちゃんと濡れているか
・トイレに長時間居座り、砂をずっとかき続けていないか(尿がぱんぱんになっていて全く出ていない可能性があります)
日頃からこうした点を意識して観察していただくことで、病気の早期発見に繋がります。
診断方法|当院でのアプローチ
当院では、全身を診る総合診療の視点から、犬や猫の排尿異常に対して以下のような手順で診断を行います。①触診
膀胱の大きさや張り具合を確認します。膀胱がパンパンに膨らんでいれば、尿道の閉塞や排泄障害を疑います。反対に、膀胱が空っぽで尿が出ていない場合には、腎不全による尿産生の低下に加え、尿管結石によって尿管が閉塞している可能性も考えられます。
②カテーテル検査
尿道閉塞が疑われる場合、カテーテルを挿入して通過性を確認します。通らなければ、結石や栓子による閉塞があると判断できます。
③血液検査
腎臓の機能を評価するため、尿が作られていない場合、膀胱がぱんぱんで数日間尿が出ていない場合には血液検査を行い、腎不全の有無や進行度を調べます。
④画像検査(超音波検査など)
膀胱内の結石や腫瘍の確認、腎臓の構造異常をチェックします。
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⑤神経学的検査
後肢の麻痺や腰の痛みがある場合には、椎間板ヘルニアなど神経障害の精査を行います。
こうした一連の診断により、重篤な疾患を見逃さず、的確な治療につなげることを心がけています。
まとめ
犬や猫のおしっこの異常は、軽い膀胱炎のようなケースもあれば、命に関わるような尿道閉塞や腎不全まで、非常に幅広い病気の可能性があります。大切なのは、「何度もトイレに行く=おしっこが出ている」とは限らないという事実を飼い主様に知っていただくことです。もし、何度も排尿姿勢をとっているのに尿が出ていなかったり、猫砂の塊が極端に小さかったりするようであれば、それは体の中で重大な異常が進行しているサインかもしれません。
当院では、年中無休で対応しており、少しでも不安を感じた際にはすぐにご相談いただけます。早めに対処することで、犬や猫の苦しみを最小限に抑え、よりよい治療結果へとつなげることができます。尿の異常に気づいたら、自己判断せず、ぜひ一度ご相談ください。
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